四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
夏休みが終わる。

夏目に今まで通り会えると思うと、嬉しい。

でも、もう今までどうりじゃないんだと思うと、悲しい。



――「それに、俺はもう来年は教師じゃないしね。」

  
――「訳あって、この1年だけ期間採用で教師をやってたんだ。来年の春には、研究室に戻る。居なくなるんだ。」
  

――「行くんだ。お父さんと一緒に行け。俺のことなんて忘れるんだ。」
  

――「私、先生のこと・・・大好き。」



あの日の会話が、脳裏に焼き付いて離れない。

来年はもう夏目はいない。

私の知らないところへ、遠くへ行ってしまう。


夏目にとってこの一年間は、苦しい日々でしかないのだろう。

あんなに生物学が好きな夏目のことだから、すぐにでも研究室に戻って研究をしたいはずだ。

きっと、何かの事情があって、ここにいるんだろう。


それを知ってしまった私は、もう無邪気に笑ってはいられない。

そして夏目も、私を避けるだろう。

夏休み明けが楽しみな反面、恐れる気持ちの方が私は大きかった。
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