四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「詩織!久しぶりー。元気だった?」

「智!久しぶりだねっ。会えて嬉しいよ!」


智は一瞬、あれっという顔をした後、満面の笑みを向けた。


「もう、詩織にそんなこと言われたら調子狂うでしょ。」

「あはは、そっか。」

「夏目先生来るよ!!ほんっとに久しぶりだなぁ。」


智に言ってあげたかった。

夏目は今年でいなくなるということを。

もちろん智は悲しむだろう。


でも、なんだかんだ言って立ち直りが早いのも、智のいいところだ。

私とは、違う。


「おはよう。……出席をとる。」


智がふう、とため息をつく。


「久しぶりだっていうのに、なんか夏目先生機嫌悪くない?」

「……。」

「詩織?」

「あ……、そうだね。」


確かに夏目は、機嫌が悪そうだった。

というか、心ここにあらずといった感じにも見える。


「休みはいない、か。」

「じゃあ今日のHRは終わりだ。」


あっという間にHRが終わって、みんなが一斉に立ち上がる。

私もロッカーに教科書を取りに、廊下に出た。


夏目が横を通る。

私は思わず、背を向けてしまう。


廊下なら、前みたいに明るく夏目に声をかけられるかと思ったのに。

いざという時に私の演技力は、まったく役に立たなくなる。

相手が夏目なら、なおさらだ。


去っていく背中が、冷たい。

私が今ここにいることに関して、夏目はきっと興味などないのだ。


やっぱり私の予感は的中してしまった。
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