四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
友人が家に来る話をすると、叔母は案外あっさりいいわよ、と言った。


それきり、何も言わなかった。


それは、私にとって苦痛だった。




分かっているんだ。

私が好き勝手振舞うのは、間違っているってことくらい。




お母さんが亡くなって、自分の子ではない私を受け入れなければならなかった叔母。

心中穏やかでないことくらい分かる。


だから、私は今まで、ずっと我慢を重ねてきたんだ。


服をねだったこともないし、遊びに行くためのお金が欲しいなんて、口にしたことは一度もない。

例え、叔母の実の娘の優香が、どんなに贅沢をしていても。

私だけ、買い物に連れて行ってもらえなくても。

当然だって思って、我慢した―――



私が大切にしている一着のワンピース。

それだけが、母の形見なんだ。




だけど、まだ足りないんだと思う。

私の存在が、私のすべてが、叔母を苛立たせるんだ。

そして、優香も。

優香がまだ小さい時は、面倒だって見たのに。

叔母の私に接する態度が移ったように、次第に冷たくなっていった。




叔母の態度が気になって、なかなか寝付けない。

こんな時は、と思って、生物の教科書を開いた。


生物は暗記教科としては好きだし得意だ。

でも、一年の時の先生の授業は、雑談ばっかりで好きじゃなかった。


夏目は違う。

授業は淡々としていて、敬語で。


寝ている人もいるし、みんなつまんないというけど、私は好きだ。

夏目は雑談と言ってもちゃんと生物の話をしてくれる。

正当に評価してくれる。


だけど担任としては……


夏目には全部悟られそうで怖かった。

もっと気楽な担任がよかった。



いろいろ考えているうちに、生物の教科書の上に突っ伏して、何もかけずに寝てしまった。
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