四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
屋上で一人でご飯を食べた。

なんだか久しぶりだ。

ご飯は涙の味がした。


夏目の好きな人って、篠原さんなのかな。

永遠の片思いとか言いながら、篠原さんも夏目のことを好きだと思う。

だとしたら、今までは叶わなかった恋が、もう少しで叶いそうだということだ。

夏目は私が邪魔なのかもしれない。


せめてあと半年。

夏目がいなくなるまでの間、私は夏目のそばにいたかったのに。


うつむいて食べていたら、屋上に人が来たことに気付かなかった。

隣に急に誰かが座ったので、私は驚いた。


「食べてやろうか。そんなに食べられないだろ。」


ぶっきらぼうな顔をした夏目がそこにいた。


「いいよ。私のお弁当の残りをあげる。」


そう言って、もう一つのお弁当箱を差し出す。


「残り、か。ひどいなぁ。」

「いらないんじゃいいよ。」

「いるよ。俺、君を頼りにして何にも食べてないんだ。」

「あっそ。」

「うん。」


しばらく無言で黙々とご飯を食べる。

でもほんとは、私の居場所を見つけてくれた夏目が、嬉しかった。


「小倉、今度ヒヨコ見に行くから。」

「嘘だ。」

「ほんとだよ。」


途方に暮れた顔で、夏目が見下ろしている。


「……ほんと?」


見上げると、夏目はほっとしたように笑った。
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