四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「はぁ……。」

「んもう、智らしくないよっ!」


智はこの頃、ため息ばかりついている。

夏目と話そうともしない。


「そうだね。ごめんね、詩織。」

「ううん。相談にならいくらでも乗るけど。でも智の悲しそうな顔見るの嫌だからさっ!」

「ありがとう。詩織ってほんと優しいよね。」


そう言って智は無理に微笑んだ。

私は胸がちくっと痛んだ。


違う。

智の悲しそうな顔見たくないとか、そんなこと言っておいて、本当の私の気持ちは……。


智の表情を通して、自分の気持ちに気付くのが怖かっただけなのだ。
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