四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
第4章 悲しみの海へ

裏切り

家に帰ると、父は酒を飲んで酔っ払っていた。


「なんだ、帰ってきたのか。さぞかし楽しかっただろう、先生との禁断のデートは。」

「……。」

「ばかやろう。俺がそんなこと、許すと思っているのか!」


父は怒鳴って、私を殴りつけた。

頬にじんじんとした痛みが走る。


「お父さん、分かったから。お父さんの好きにしていいよ。」

「……本当か?本当なんだね?」


父は急に顔色を変えて、笑顔になった。

夏目の綺麗な笑顔と比べて、同じ人間のものとは思えないほど穢れた笑顔だと思った。


「詩織!殴ったりしてすまなかったな。痛かっただろう。痣にならないといいけれど。」

「……。」

「詩織?もうお父さんは何も言わないよ。あの男ではなく、秋を選んだ賢い娘を、お父さんは誇りに思うよ。」

「……。」


こんなことなら、転校していればよかった。

夏目のそばから、そっと姿を消せばよかった。

いずれにせよ忘れられないなら。


不思議と涙は出なかった。

心のどこかで私は、納得してしまっていたから。


もういいんだ。これが私に用意された償いなのだろう。

私だけ幸せになることは許されない。

許されないんだ……。
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