四月の魔女へ ~先生と恋に落ちたら~
「先生……。」


小さな声で呼んで、準備室のドアを開けた。

一瞬夏目が私から目を逸らしたような気がした。


「先生、今日頑張ってオムライ、」

「小倉、もうお弁当はいいよ。今までありがとうね。」

「え……。」


見ると、夏目の机の上にはすでに広げたお弁当箱があった。

私は近づいて、それを覗き込もうとする。


「先生自分で作ったの?どうせ、」

「篠原さんだ。」


耳を疑った。

夏目の方に進めかけた足が、凍りついたように動かなくなる。


「嘘……。」


夏目は何も言わなかった。


私はうつむいて、ゆっくりと生物準備室を後にした。

大切なものが何だったのか、やっと思い出しながら。


前は追いかけてきてくれた夏目。

残りだといったお弁当を、一緒に屋上で食べてくれた夏目。

でも今回ばかりは、追いかけてきてはくれないのだ。


知らずに流れ出した涙はそのままにして、私は屋上へと向かった。
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