一瞬のヒカリ
僕は確かに派手に抜いたかも知れないがきちんと喧嘩を売るようには抜いてないはずだ。
頬に吹き出物のある背の高い方が僕の車のタイヤを蹴った。
僕は車を出ると背の低い方に先に拳を叩き込んだ。
背の高い方は、僕がそんなに早く動くと思わなかったのだろう。
驚きの顔が醜く歪んだ。
その顔ではいくら高いスポーツカーに乗ってても女にモテないなと思いながら拳を腹と顔面に叩き込んだ。
もう一人が立ち上がりかけていたので腹をブーツで二度蹴った。
背の高い方もノロノロ立ち上がりかけていたがそれを見て倒れたふりをしたので顔面をブーツで蹴り上げた。
僕は車に乗るとゆっくり皮の手袋を外して車を出す。
シートからまた一錠だけ薬を飲むとラジオをつける。
ラジオから昭和の歌謡曲が流れてくる。
思わず口ずさむ。
海が見えると空に一瞬の光が見えたような気がしたが、気のせいだろう。