私のお人形
「ユリ! ユリちゃん!!」

ママの悲痛な叫び声が聞こえる。

薄く目を開けると朝日が差し込んでいた。

そうだった。

私は昨日ベッドの下にもぐりこんだまま…。

這うようにしてベッドの下から体を出すと、ママのスリッパが見えた。


このスリッパ、パパが選んだのだ。

ママ、「パパのものなんかみんな捨てる」って言ってたけど、これは捨てなかったんだ。

そんなことをぼんやり考えていると、上から声が降ってきた。



「ユリちゃん、どうしてそんなところに…」

見上げるとママの悲しげな表情がぼんやり見えた。

「だってだってね、昨日の夜チャックが来てね…」

「チャック?」

「うん、おもちゃ屋さんにいたでしょ」

「チャックが来たっていうの…?」


ママは泣いていた。

しゃがみこみ、私の体を抱いて、おいおい声をあげて泣いた。


< 21 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop