私のお人形
「そうだ、セーラは? セーラは?」


あのときセーラが追いかけてきていた。

その差がどんどん縮まって、すごく怖くて、私は必死で逃げた。


「それがね…」

ママが目をそらした。

なんだか言いにくそうに、ため息をつく。




「セーラは車のタイヤに轢かれてしまって…」

「死んだの?」


ママは慌てたように、顔を左右に振る。


「ちがうちがう。人形だから、死んだとは言わないわ。ひどく壊れてしまったっていうのかな。ちょっと直せないくらいに…」

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