私のお人形
病室の隅のパイプ椅子にセーラは座っていた。

髪の毛は半分ほど引き抜かれ、顔の半分がえぐりとられている。

ピンク色のドレスにはタイヤ痕がくっきり残り、そのせいだろう。

両足を失い、体を支える芯も折れたらしくぎこちなく上半身も曲がっていた。

かろうじて左腕だけが申し訳なさそうについている。




――セーラは死んでいた。




「ユリちゃんはセーラを抱いていたの?」

ママが鼻をすする。

「え、どうして?」

抱いているわけない。

セーラから逃げていたんだから。

もちろんママにいえるわけはないのだけど。

「セーラがユリちゃんをかばうようにして倒れていたって、救急隊員の人が言ってたから」
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