私のお人形
何も変わらなかった。

私は普通に学校に行き、ママは会社に行く。

一人でいるとき、ときどき誰かに見られているような気はしたけれど、セーラやチャックが現れることもなかった。

きっと、大丈夫よね。

ちゃんと御殿に鍵もかけてくれるって言ってたんだし…。




――数日後。

夕飯後テレビを見ていると突然電話が鳴った。

「はい、もしもし」

エプロンで手を拭きながら電話に出たママだったけど、様子がおかしい。

「え…。そ、そんな!」

唇を震わせ、必要以上に強く受話器を握り締めるママ。

「はい、はい。でも、そんなことって…。わ、わかりました。では、そのときに」

ママはそう言って電話を切った。

電話を切ったあとも、ママは受話器を置いた手をそこから離せないでいる。

「ママ…?」

私の声で、ママはようやく自分を取り戻したみたいだった。

「あ…ユリちゃん…」

「電話…誰から?」

ママは不自然な笑顔を浮かべていた。

顔色は青ざめたまま。

唇の色だってかなり悪い。

「ママ…?」

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