私のお人形
ママはキッチンに入り、引き出しから何かを取り出した。

ママは銀色に光る刃先を振り上げ、セーラの体に突き刺した。

包丁がセーラの胸に突き刺さる。

ママは何度も引き抜いては、これでもかこれでもかと言うように、セーラの体のいたるところに包丁の刃で痛めつけた。

ただでさえ傷だらけだったセーラの体はところどころ穴も開き、向こう側が見えてしまうほどだ。

汗にまみれたママは肩で息を整えながらもセーラを睨みつける。

「あんたなんかにユリは渡さないわ」

けれど、セーラの顔はさきほどとなんら変わらない鬼の形相で、その表情のまま不気味に笑っている。

「見かけによらずやるときはやるんだ」

確かにそう言った。

そしてやれやれというように首をなんどか左右に曲げ、そのまま首を360度回転させた。

「今度はこっちの番だね」

セーラはそう言いながら、天井に届くほど飛び上がり、そのままママの顔にしがみついた。
< 92 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop