私のお人形
ママの口元に手を伸ばす。

かすかな息遣いを右手に感じることができた。


息をしてる!

よかった、ママは生きてる。



「さてと、邪魔者はいなくなったことだしとっととやっちまおう」



振り返ると三日月形の銀色の刃が頭上に輝いていた。

「それは…」

「十三年前しくじったからね、今度は絶対成功させるよ」

セーラは自分の体の数倍はある大きなカマを振り下ろした。

しかし私が体を翻したことで、カマは空振りに終わった。

「どうして、どうしてそんなことするの?」

「知ってるだろ。私は人間になりたいんだ」

そう言えば、車が動かなくなった時チャックが言っていた。

セーラは人間になろうとしてるって。



「人間になってどうするの?」

そうだ。

なんのために人間になるのだろう。
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