どうか君に【短編】
インターホンを鳴らす。


ドアから優子の母親が顔を出した。


優子の母親は驚いた顔の次に、悲しそうな表情を見せた。


「優子居ますか?」


「ごめんねぇ。優子、今入院中で居ないのよ」


えっ?


優子……そんなこと一言も……


「い、いつからですか?」


「夏休みになってすぐよ」


俺は立て続けに質問した。


「どの病院ですか?」


だが、母親はこの質問には答えにくそうに俯いた。


そして言いにくそうに言う。


「あの子、あなたには会いたくないって。だから、あなたに入院先教えないでって言われてるのよ」


「あ、会いたくない……?」


なんで?


頭の中が混乱した。


母親が申し訳なさそうにしている。


「わ、わかりました。すみません」


そう言ってその場を離れることにした。


「ごめんねぇ」


最後まで母親は申し訳なさそうだった。



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