どうか君に【短編】
「ねぇ」
沈黙を破った優子の声で俺は振り返った。
「もし……」
少し声が震えてるような気がした……
「もし砂漠のどこかに小さなガラスの破片を落としたとして……それを探せると思う?」
何かを怖がっているような、それでいて真剣な目で俺に問い詰めた。
「そんなの無理だろ」
何も考えなかった。
何も考えず……
何も知らずに……
俺はそう言った。
お前の気持ちも知らずに……
「そうだよね」
なぁ、優子……
お前は……
あのとき無理に作った笑顔が……
泣きそうな顔をしていたのに……
気付いてた?