氷菓子チョコレート


「あのねぇ、そんなに学校学校って連呼しないでくれる?」


「で、でたー、さこちゃんの女王様キャラ!ごめん、ごめん!」

「わかればいいのよ。とにかく私は学校なんてだいっきらいなの。次言ったら許さないから。」

「わ、わかったよ。…ていうか、いきなり店に来て…何か用?」

「そんなん、ここに来たらすることは一つでしょ?いちいち言わせないで。」


この店員は私がいつも通ってるライブスタジオのスタッフ、平坂湊(ヒラサカ ミナト)。

大学2年らしくて、年上なんだけど、私は呼び捨てで呼んでる。だけど湊は私のことをちゃん付けして呼んでくる。
理由は「お嬢様って感じでかわいくて、とても偉そうに呼び捨ては無理だよー」…らしい。

スタジオをかりる時によく会うようになって、今では気さくに話せるようになった。


「なんでそう偉そうなのかなー。…じゃあ今日はもうスタジオ開けてやーんないっ。」


えっ。


「まぁ、そんなことほんとはしな…」


「…そんなことしたら、どうなるかわかってんでしょうね…?」

私が湊を睨むと、湊は真っ青になった。


「え、じょ、冗談だよ、さこちゃ…」


「誰のおかげでこのライブスタジオが儲けるようになったか忘れたの…?」


私は湊に詰め寄る。


「さ、さこちゃんのおかげです!美人で、ギターも上手くて、歌も上手い、さこちゃんのおかげです!!!」


「…わかればいいのよ。」

「そ、それに、僕が落ち込んでた時とか、困ってる時とか、そんな時にぶっきらぼうな言葉でもなぐさめてくれる優しいところとか、すっごく感謝してるし、あと他にも…」


「も、もういいからっ!それ以上言うの禁止!!」


不覚にも照れてしまうことが恥ずかしい。

湊、私のことこんなふうに思ってたんだ。

私は照れたことを隠すように足早にスタジオに入った。


「…照れちゃってかわいいな~。」


さこが入っていったスタジオのドアを見つめながらつぶやく。


「さこちゃん、ありがとう…。」







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