空色ラプソディー
放課後、相川と私は所属する写真部の部室である生物室へ行く。
別棟の日の入らない奥にあるため教室はいつも薄暗く、さらに棚に並ぶホルマリン標本が、生物室に生徒が近づきにくくするのに一役買ってくれていた。
おかげで必要部員定数ぴったりな5人しかいない写真部に、準備室をまるまる貸してもらえるのだ。
ホルマリン漬け様様だ。
よく見ればカエルなんか可愛い顔を…しているような気もしないこともない。
まだ夕方なのについている、チカチカと点滅する電球の下を歩いていく。
相川が人差し指をたてながら私にいってくる。
「一説にはこうあるわ。宇宙は同時多発的に起こったのではないかと」
「どういうこと?」
「熱源を観測するとね、障害物をどかしたあらゆる場所で、ある一定の値を示すのよ。これはあり得ないことよ?」
「そうか、所謂ビッグバンが宇宙の起源なら…」
「そう、爆発の中心があるはず。そこには今でもその名残が残り、遠ざかるほど、名残は弱まる」
「名残、つまりエネルギーか」
「正解。この研究をした学者は宇宙の中心を知りたかったのかもしれないわ。でも明らかになったのはその逆。そう、」
「ビッグバン…いえ、宇宙は全てを中心として起こった…。確かにおもしろい話」
「まあ、とりあえず今日も部活頑張りましょ」
「うん、大会も近いし」
相川が大きな音をたてながら生物室の戸を開けた。