歌姫桜華


 ―――でもその考えが、あまかった。




「待て。美藍」



 いきなり和也に呼び捨てにされて、ドキリとする。


 龍華にいた頃、私のこと呼び捨てにする人なんていなかったからかな…。



「なに?」



「倉庫に、…来ないか?」


「ヤダ」


「なんで」


「じゃあ、どうして誘うの?」




 関わりたくないのに。


 ……あーあ。振り向かなきゃよかった。



 今更にして後悔。



「知りたいからです。」



 ド直球でそう言ったのは、和也ではなく紺

 
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