歌姫桜華




「そ、そうだね。ありがと」




 別に断らなくてもいっかと思った私は二・三度首を縦に振り、和也と一緒に更衣室へ向かった。





 和也も気配を消しているのか、周りにいるみんなはこちらを見向きもしない。さすが、甲羅の総長だ。素人なら、自分では消しているはずでも相手からはもろバレだもん。






 ――更衣室へ着き、私は和也に更衣室前で待っててと伝え、更衣室の中へ入ってった。




 急いで仮面を外し、メイクも落とし、束ねていた髪を下ろす。


 アイロンで髪をストレートに直し、MIRIAの衣装から制服へ着替える。


 MIRIAの衣装などは、制服のスカートのポッケにいれといた折りたたみ式バックにいれ、更衣室を出た。




 ガラッという音をたて、私は扉を開けて閉める。




「お待たせっ」



 明るい声で和也の顔を覗き込みながら言うと、和也は「じゃあ、行くぞ」と言った。


 行くってどこに…?


 そう聞こうとしたけど、やめた。どうせ和也のことだから、教室にでも行くのだろう。


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