歌姫桜華
「…っ、ダメだ。離さない。
離したら、起きようとするだろ?」
一瞬私の恐さにビクッとしたが、すぐまた和也は意見を変えずに言った。
和也も頑固だと思う。私に負けないくらい。
「大丈夫だって!!ね?離して―――――わっ」
「ヤダつってんだ…ろ―――――っ!!」
私が結構力をつけて片方の和也の手をはらおうとしたら、そうせいで和也はバランスを崩し、こちらに和也が近づいてきた。
一瞬のことだったと思う。
目の前には和也の顔が見える。…が、全部ではない。目だけはかなりのドアップで見える。