歌姫桜華
今までつっ立っていた奏多は「座っていいか?」と聞き私が頷くと、深くソファに腰かけた。
「――――いつかは、言わねぇとなって思ってたし、言いたかった。
だから、今、言うよ」
軽くフッと微笑むと、私の顔を見て話だそうとした。
「無理…してない?」
でも私は、奏多が話す前に聞いた。
無理してるんだったらやめて。辛い過去の一つや二つ、持ってて当たり前だから。
聞かれたくないんだったら、いいよ。言わないで。
わかるもん、その気持ち。ごまかしたくなる、その気持ちが。
「無理なんかしてねぇよ。
俺が、話したいだけだし。……それに、美藍にはなんか言いたかった。なんでだろうな」
奏多は手に持っていた色紙とペンをテーブルの上に置き、今度こそ話し始めた。