歌姫桜華
「そんで俺は甲羅に入ったんだ。甲羅の奴らはみんな優しくて、すぐ好きになった。
甲羅に入って、大分この生活にも慣れてきた頃―――――
甲羅には結構美形が多くてな、あの頃は倉庫に女が次々と見に来てたんだよ。
総長たちはウザかってたけど、なんでか最初は俺は別にウザイとは感じなかったんだよな…。
多分、俺…甘えたかったんだと思う」
「甘えたかった…?」
「あぁ。母さんには心配とかかけたくなくて、わがままとか甘えるって行為とかしたことなかった。……だからだろうな。甘えたくなったんだ。女を見たら。
離れて行ってほしくない。独りになりたくない。
きっとそんな思いが、俺の女好きに繋がったんだと思う。
けどそんな思いもだんだんと消えつつあった頃には、もう俺は女好きでチャラいってキャラが出来上がってて、今更それを否定するのも面倒だったから、今までこうしてやってきたってわけ」
長い長い過去を奏多は話し終えると、ふぅ~疲れたぁ、とため息混じりにそう言った。