歌姫桜華
「話してくれてありがとう。
ごめんね。いろいろと思い出させて。辛かったでしょ?」
「いや、逆にスッキリしたよ。なんでかな?ハハッ」
私はMIRIAのサインをスラスラと書き、「はい」と色紙を渡す。
「おぉ…!サンキュッ」
まるで宝くじにでも当たったかのような喜びを奏多は笑顔で表す。
「いえいえ」
私は、ペンのキャップを締めながら小さく微笑む。
「――――美藍にも、きっと言えない過去があるんだろ…?」
いつもより低い声に内心はっとしながらも、私は平然を装いながら曖昧に「さあ?」と答える。