歌姫桜華
「じゃー、俺行くなっ。
サインありがとな。またな!」
立ち上がり奏多はそう言うと、ニコッと笑って帰っていった。
「うん…。バイバイ」
いつまでそう言えるのかな、私は。
私は儚く手を振り、奏多が出て行ってから「バイバイ」と口に出した。
みんなに近づくたび思う。
近づけば近づく度、別れが辛くなり苦しくなる。
独りが嫌いになり耐えられなくなる。
人の温かさに触れた今、私は闇に背ばかりを向けている。
それじゃダメだとわかっていても、振り向く勇気が今の私にはないんだ…。