歌姫桜華




 家を出るとき、ヒンヤリと頬を伝ったのは紛れもなく涙だった。






 あれは、もう桜が散り終えた時季。









 流れる涙を止めることなく、私は家を出て独りで生きようと思ったんだ。









 それなのに、私はまた独りではなくなってる。



 また、この色鮮やかな世界へと入ってしまった。




 闇を抱えてる私が、こんな光が溢れる世界へと。







 徹……お母さん…お父さん……。





 ごめんね――――――――……





< 373 / 830 >

この作品をシェア

pagetop