歌姫桜華




 中からは、鈍い音や息の音が聞こえてくる。




 甲羅の下っ端のやつらはほとんどがやられ、残っているのはもう和也たち五人。





 清乃は高みの見物。そして、清乃の後ろに二人ククッと笑いながら戦いの様子を見ている。




 清乃以外、影狼のやつらは鉄パイプを持っていた。



 …やっぱり汚ぇ手使いやがって。





 ゴクリと唾を飲んでから、私はじ…と見守る。





「うっ」




 倉庫に奏多の苦しそうな声が響く。背中を鉄パイプで殴られたのだ。



 膝がカクンと曲がり、顔面から倒れる。




 バタン…!と倒れた音に、紺と美橙が奏多を見る。


「大丈夫ですか!?」

「奏多…!!!」


 その声に奏多は「…あぁ」と片目をつぶりながら言った。



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