歌姫桜華
ゆっくりと進める足。足音は一切しない。
今までどうして悩んでいたんだろう。答えは、すぐ目の前にあったのに。どうして気づけなかったんだろう。……いや、気づいてた。でも目をそらしたんだ。
「守りたいもののために戦え、“桜華”」
ポツリとつぶやいたのは、道を間違えた奴らに言ってた言葉。
その言葉を、今、改めて心に刻んだあと倉庫の扉の真ん中に立った。気配はまだ消しているので、みんなこちらには気づかない。
桜のように美しく戦い、華のような容姿。―――実際そうかわかんないけど、そうなりたいとは思ってるよ。
“私”が“桜華”に一歩でも近づけるように。