歌姫桜華
冬から春へともうすぐ変わる、そんな季節。
雪がまだ積もっているが、ココへ来る前に桜のつぼみがチラチラと見えた。
――早いな。季節が過ぎるのは。
そんなことを考えていると、あそこへともう着いていた。
トントンッとリズムよくノックしてから返事を待たずにガチャ、と扉を開けた。
「おい、俺の返事なしで入ってんじゃ……ね…ぇ………」
だだっ広いあそこにあるソファにデカすぎる態度で座っているあの人が、私の顔を見て数秒驚いていた。
「……なぁ、健吾。夢じゃねぇよな?」
隣に座ってた元・担任に、あの人が確認した。元・担任は「あ、あぁ。多分」と曖昧に答えた。