歌姫桜華
…忘れる?
「は、はい…」
「じゃあ、中へレッツゴー!」
美藍さんは扉を開き、中へ入った。
忘れる…のが一番いいかもしれない。俺だって今「はい」って言ったじゃないか。
でも、なぜか胸が針に刺されたみたいに痛い。ズキン…という鈍い音を立てる。
――――忘れられない。忘れたくない。
心がそう叫ぶように、ドキン…と脈をうった。
今まで美藍さんのことで頭がいっぱいだったのに、そう簡単に忘れることなんてできない。