歌姫桜華
この縄さえとければ、ここからすぐに脱出するのに。
誰が縄なんかで私を縛ったんだよぉ!!
「咲久たちは、多分助けになんて来ないよ…」
誰にも聞こえないくらいの大きさで呟いた私の声を、案の定、青澤は拾ったらしく。
「来るさ」
と私の言葉をバッサリ否定する。曇りのない言い方。
来ないよ…。来たとしても、多分私のためなんかじゃない。たまたま行ったらいた、みたいな感じだよ、きっと。
「ねぇ、縄といてよ」
「やだね。といたら、逃げる気だろ?」
「まぁね」
「それを聞いたら、ますます嫌だわ」