歌姫桜華
外に出ると、そこには黒のベンツがあった。
そして、扉を開けて私を待っている正義のヤンキーが。
ワックスで整えられた栗色の髪。
着こなしている執事用のシルバーのタキシード。
――か、かっこいいわ…。
「お待ちしておりました。逢恋お嬢様」
わざとらしく「お嬢様」をつけた呼び方で微笑みながらそう言ったボディーガード。
私は照れた顔を隠しながら、車に乗り込んだ。そのあとに、ボディーガードが隣に乗ってきた。
「え、ここに乗るの!?」
「他に乗る場所ねぇだろ?」
「あるでしょ!!前とかっ」
「いいから、いいから」
……ダメだわ。私、完全にこの人のペースにのせられてる。