歌姫桜華
「はぁ…。
車、出してちょうだい」
運転手にそう伝えると、静かに走り出した。
隣に好きな人がいる。しかも、こんな狭いところに…。
チークはぬっていないはずなのに、頬がピンク色に染まっている。
ドキドキドキ…と加速する胸を抑え、私は横目でチラリと彼を見つめた。
見た目、こんなにかっこいいのに…ヤンキーなんて嘘みたい。絶対、「ホスト」って言っても信じてもらえるわ。
……女の子にもモテるんでしょうね。当然ながら。こんなにかっこいいんだもの。きゃーきゃー言われて当然よね。…そうよ。当たり前なのよ…っ。
――胸がズキリと痛む。独り占めしたい、だなんて……わがままね私。無理に決まってるじゃない。だって、今日限りの関係なんだもの。