歌姫桜華
「逃げちゃたねぇ。まだ殺り足りないのに」
「怖いよ、昂」
ハハッと可愛らしい笑顔を俺に向ける昂。
目が笑ってませんけど……。
「……怖かったぁ………グスッ」
しまった!すっかり女子の存在忘れてた!!
女子の方へと顔を向けると、助けを求めていた子は地面に座り込んで涙を拭っていた。
顎下で整えられた内巻きになっている、色素の薄い焦げ茶色の髪。
今まで泣いていたのか潤んだ焦げ茶の瞳。
そんな彼女に俺の胸はトクン…と甘い鼓動を高鳴らせた。