歌姫桜華





 ――男二人組のあとを追って、たどり着いた先は薄暗い路地にある隠れ家的なちょっとおしゃれなカフェ。


 カフェといっても、バーに近いのだが。




 私は様子を伺いながら、中へ入った。


 店内はとても落ち着いていて、黒を基調としたインテリアなどが大人っぽい雰囲気を強調させていた。


 落ち着いた音楽が流れている中、私の視界には必ず男二人組を入れていた。




 私は男二人組が座ったカウンター席から二つ離れた席に座る。


 ……“何か”の虜って言ってたけど、何の虜なんだろう。




 もしかして――――。




 いや、まさかね。頭に浮かんだ“何か”の予想に対して、違う違うと頭を左右に振る。





「ご注文は?」




 店員が、男二人に無表情で尋ねた。





「Mind go mad snowをひとつ」


「俺も同じのください」





 マインド ゴー マッド スノー?


 心狂う雪…?





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