歌姫桜華





「もういっかい言うよ?」




 私は麻薬を持っている人全員に向けて、言った。






「麻薬、頂戴?」



 そこにいた人全員、震えが止まらなかった。






「そして、このことは忘れな。いい?こんな間違った道を選ぶんじゃなく、正しい道へと引き返しな。
 今ならまだ間に合う。虜になるのは今日でおしまい」






 麻薬なんてものは、存在しちゃいけない。


 楽を求めて、こんなものに頼っちゃいけない。




 新しく、今日からスタートしていけばいい。





 パサパサ……





 客たちは、麻薬を地面に捨てて逃げるように去っていった。


 それを見て、ホッとする。



 私の言葉が届かなくなるほど、幻覚を見るほど、麻薬に頼ってる人がいたらどうしようって思ってたから。



 だけど、まだとりつかれるほど頼っている人はいなかったみたい。





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