歌姫桜華




 駅前のおしゃれなカフェの前。


 待ち合わせ場所のそこで、しゃがんでいる人がいた。





「和也……」





 そう、その人こそ和也だった。


 待っててくれたんだ…。



 帰っちゃってると思ってたから、嬉しい。





「か、和也!」



 声が震える。


 さっきまでの勇ましさは、どこにもない。



 呆れてるかな?怒ってるかな?




 私の声を聞いた和也は、ハッとしたように顔を上げた。



 私を見て、和也は眉間に皺を寄せて近寄ってきた。


 私の両肩に手をおいて、言った。





「今までどうしてたんだよ!!」




 こんな表情、今まで見たことがない。


 怒ってるような、心配してたような…そんな、どこか優しさのある表情。





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