歌姫桜華




 もう、優しすぎるよ和也は。


 もっと怒ってもいいんだよ?なのにさ。




 どうしてこんな優しい声で、そんな嬉しい言葉を言ってくれるの?





「これからは一人でそんなとこ行くんじゃねぇぞ?その場所がわかっても、一人で入ろうとすんな。俺を頼れ」



「でも、私…桜華、だよ?」




「たとえ俺らの憧れの桜華でも、“美藍”だろ?一人の女だろ?
 それに、――もっと頼って欲しいし」





 「俺、一応彼氏なんだからさ」と呟く声が、私の胸を高鳴らせた。


 …うん。私は小さく頷いた。





「ありがとう」





 私がそう言って微笑むと、和也はうっすらと頬を赤らめて、微笑み返してくれた。




「今から……ちょっとだけでもデートしちゃ、だめ?」



「いいに決まってんだろ」





 和也はさりげなく私の手と自分の手を重ね、指を絡ませた。


 恋人つなぎは、とても温かく緊張したけど、嬉しかった。





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