歌姫桜華





「それがどうしたんだよ」



「いや、別に気になっただけ」




「……ふーん」




 あのね、和也。


 私、好きな人と付き合うのは初めてなんだ。




 私にとっては、こうやってデートするのも手を繋ぐのも抱きしめられるのも、初めてなんだよ。






「あ、でも」



「?」




「俺の初恋は、お前だから」




「!!」






 甘い言葉を言ったあと、小さく微笑んだ和也は、


 私に甘い甘い、キスを落とした。





 これから始まるのは、夕暮れの初デート。


 少し遅れてやってきた、幸せの初デート。






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