実験体が恋をした
・・・ああ、そういうことか。
「ええっ。どうしよう」
千尋が私に助けを求めてきた。
「竜也って、
ちゃんと大事にするタイプ?」
千尋は間を置かずに、
「うん」
と答えた。
思い当たるところがあるのだろう。
「じゃあ、大丈夫じゃない?」
竜也には悪いけど。
やっぱり気持ちは伝えたほうが、
いいんだよね。
これまでの人生の経験で、
そう学んだから。
「わかった。今、大丈夫かなぁ」
千尋は、教室から出て行った。
「ねえ」
「はいっ!?」
よほど緊張していたのか、
声をかけると、
すごくびっくりした感じに
返された。
「そんなにびくつかないで。
でも、結果がどうあろうと、
私たちの責任じゃないから」
目線は真面目に、鋭くしながら
私は言った。
「・・・・」
その子は、無言で
(こくん)
と頷いた。