気づかないスキ。
時計を見てハッとなった葵衣は、プリントを抱えたまま俺の前から消えた。



俺の方が重たいんですけどー…



葵衣の三倍持たされた。



『はいっ!これ季市の分ね♪』



なんて笑顔で言ってくるもんだから。



なんか、断れないじゃんね。



ほら、俺やっさしーから☆



まあーでも、あー見えて癸生は学年の中で一番モテるかんなー



見とるだけで分かる。



んと、なんだっけー…



相宮も好きとかなんとか…いってたっけやぁー?



そんなことを考えてる間に教室に着いてしまった。



「えーっと。遅れてすいませーん」



教卓には既に学校内で一番怖いと言われている、ハゲツルピンの森谷先生が。



眉間にシワを寄せ、腕を組ながら待っている様子。



「誰かさんに通常の三倍の量を持たされたせいで遅れましたーその人僕と名前似てまーす」



葵衣のせいにしちゃえー



葵衣をバッと、ドヤ顔で見ると…



なっ!と言いながら顔を赤くしてしまった。



あーほんとアイツ見るとたのしーじゃんね



「えーっと。お説教を聞きたい気持ちも山々なんですけど、とりあえずプリントを置きに座ってもいいですかねー
僕と名前似とる人がプリントよこせ言うとるんで」



許可をもらってから、葵衣の前の席に座った。



ぱっと癸生の方を振り返って、机の上にプリントをドンッと置いた。




「よろしく☆」




「もう!季市意地悪!きらい!もうほんとやー!」



まわりの人も俺もクスクス笑う。



「私語厳禁!」



あっハゲツルピンやっと動いたー



「神野季市!香野癸生!呼びにくいだぶるKめ!お前ら仲良すぎてごちゃごちゃうるさいんじゃ!授業終わったら復習プリントを出すから職員室に来い!いいなあ!」




「「はーい…」」
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