異世界で家庭菜園やってみた
「明日、行こうと思います」

外務部に出かける前、ウリエルはコウメさまの元を訪れた。

コウメさまは編み物の手を止め、ウリエルを見た。

「疲れた顔をしているわね」

「そう、でしょうか?」

「旅の疲れ、という訳ではなさそうね。ユーリと何かあった?」

「……おばあさまには、隠し事は出来ませんね」

「あら。しようと思う方が間違っているわ。大丈夫なの?」

「ええ。俺が自爆しただけだから……」

コウメさまは小さく目を瞠ると、「まあ」と言って、くすくす笑った。

「何も笑うことはないでしょう」

「お前もまだまだ若くて、不器用ね。ウリエル」

「……まあ、ことユーリに関することでは、自分でも辟易するくらい不器用ですよ」

コウメさまは余程可笑しかったらしく、まだくすくす笑っている。

「では、俺はそろそろ……」

これ以上針のむしろは嫌だと退出しようとするウリエルを、コウメさまは笑いながら呼び止めた。

憮然とするウリエルに、コウメさまは言った。

「無理やり家族と引き離され、この世界に来たユーリの心に寄り添っておあげなさい。あなたがあの子にとって、家族以上の存在になれば、きっと受け入れてくれるでしょう」

その言葉に、ウリエルははっとした顔をした。

「おじいさまは、おばあさまにとって、そんな存在だったのですか?」

「ええ。あの方は、わたくしにとって、唯一無二の、運命の相手でしたからね」

「……」

ウリエルは頭を下げ、何も言わず出て行った。

自分が悠里にとって、運命の相手などというものではないだろうことを確信しながら……。






< 105 / 152 >

この作品をシェア

pagetop