異世界で家庭菜園やってみた
悠里の言葉に、おばさまがたは顔を見合わせた。
「そんな話、初めて聞くわ」
「もっと詳しく聞かせて頂戴」
「えっと……。わたしは召喚されても、特に何の知識も能力もある訳ではないので、お役に立てないなあって思ったんですが、でも、野菜を作ることは出来るので、それをディントの皆さんに広めよっかなあって思ったんですよね。それで、土を耕すのに便利な、鍬の注文をするためにリュール王国に行って。それで、これからいよいよ畑作ろっかなあって思ってるんです」
「まあ。それが、あなたがこの国に召喚された意味なのね?」
「意味っていうか……。それくらいしか出来ないので」
「いいえ。素晴らしいわ。かつて、コウメさまもこの国の為に、機織りの技術を教えて下すったの。今度はあなたが、野菜作りを教えて下さるのね」
「協力するわ」
「協力と言っても……」
「わたくしは体を弱くしてしまったから、労働力にはならないけれど、資金なら、いくらでも寄付出来ますわよ」
「え、でも……」
「遠慮は無用です。この国の為に力を尽くそうとしてくれている、あなたの為ですもの。私も寄付しますわ」
「わたくしも」
「わたくしも」
寄付に手を上げるおばさまがたに混じり、使用人の何人かを手伝いに出そうという人もいて、悠里は嬉しい悲鳴を上げた。
まさか、貴族のおばさまがたに、こんないい反応を貰えるとは思ってもみなかった。
「み、みなさん。ありがとうございます!!あの、本格的な作業は一ヶ月後。リュールから鍬が届いてからになるので、それまではお手伝いも大丈夫だと思いますし、何かあれば、お願いします!」
深々と頭を下げる遊里を、おばさまがたは優しい目で見ていた。
「何やら、お話が盛り上がっているようね。ユーリ」
「コウメさま!」
ようやく、コウメさまがこのグループに挨拶に来てくれた。
そう思って、ほっとした顔でコウメさまを見る悠里の頭が、不意にくしゃりと撫でられた。
(え?)と思って振り向くと、黒い正装。
視線を上に上げて行くと、穏やかに微笑むウリエルの秀麗な顔に行き当たった。
「うまくやったな」
「え?」
首を傾げる悠里の耳に、ウリエルは口を近付けると囁いた。
「このご婦人方は、寄付をすることは、貴族の義務だと思っている方々ばかりだ。遠慮なく受け取っておけよ」
「……ウリエルさん。もしかして……」
その為に、このお茶会に悠里を出席させたのか?
「おばあさまも、機織りを始める前には莫大な寄付を受けたらしい。その例に倣っただけだよ」
ウリエルの息が耳に掛かり、悠里はくすぐったく感じて、小さく肩を弾ませた。
ゆっくりと、悠里の耳元からウリエルの顔が離れて行くのに、逆に悠里の顔は熱くなっていく。
まるで全神経が、後ろに立つウリエルに集中しているようだった。
その後も彼の気配を探り続けた。
おばさまがたのことはコウメさまに任せ、自分の事で精一杯の悠里だった。
「そんな話、初めて聞くわ」
「もっと詳しく聞かせて頂戴」
「えっと……。わたしは召喚されても、特に何の知識も能力もある訳ではないので、お役に立てないなあって思ったんですが、でも、野菜を作ることは出来るので、それをディントの皆さんに広めよっかなあって思ったんですよね。それで、土を耕すのに便利な、鍬の注文をするためにリュール王国に行って。それで、これからいよいよ畑作ろっかなあって思ってるんです」
「まあ。それが、あなたがこの国に召喚された意味なのね?」
「意味っていうか……。それくらいしか出来ないので」
「いいえ。素晴らしいわ。かつて、コウメさまもこの国の為に、機織りの技術を教えて下すったの。今度はあなたが、野菜作りを教えて下さるのね」
「協力するわ」
「協力と言っても……」
「わたくしは体を弱くしてしまったから、労働力にはならないけれど、資金なら、いくらでも寄付出来ますわよ」
「え、でも……」
「遠慮は無用です。この国の為に力を尽くそうとしてくれている、あなたの為ですもの。私も寄付しますわ」
「わたくしも」
「わたくしも」
寄付に手を上げるおばさまがたに混じり、使用人の何人かを手伝いに出そうという人もいて、悠里は嬉しい悲鳴を上げた。
まさか、貴族のおばさまがたに、こんないい反応を貰えるとは思ってもみなかった。
「み、みなさん。ありがとうございます!!あの、本格的な作業は一ヶ月後。リュールから鍬が届いてからになるので、それまではお手伝いも大丈夫だと思いますし、何かあれば、お願いします!」
深々と頭を下げる遊里を、おばさまがたは優しい目で見ていた。
「何やら、お話が盛り上がっているようね。ユーリ」
「コウメさま!」
ようやく、コウメさまがこのグループに挨拶に来てくれた。
そう思って、ほっとした顔でコウメさまを見る悠里の頭が、不意にくしゃりと撫でられた。
(え?)と思って振り向くと、黒い正装。
視線を上に上げて行くと、穏やかに微笑むウリエルの秀麗な顔に行き当たった。
「うまくやったな」
「え?」
首を傾げる悠里の耳に、ウリエルは口を近付けると囁いた。
「このご婦人方は、寄付をすることは、貴族の義務だと思っている方々ばかりだ。遠慮なく受け取っておけよ」
「……ウリエルさん。もしかして……」
その為に、このお茶会に悠里を出席させたのか?
「おばあさまも、機織りを始める前には莫大な寄付を受けたらしい。その例に倣っただけだよ」
ウリエルの息が耳に掛かり、悠里はくすぐったく感じて、小さく肩を弾ませた。
ゆっくりと、悠里の耳元からウリエルの顔が離れて行くのに、逆に悠里の顔は熱くなっていく。
まるで全神経が、後ろに立つウリエルに集中しているようだった。
その後も彼の気配を探り続けた。
おばさまがたのことはコウメさまに任せ、自分の事で精一杯の悠里だった。