異世界で家庭菜園やってみた
春の終わり。暖かな日差しが大地に降り注ぐ季節になっていた。
木々には新緑の芽が出始め、いよいよ家庭菜園も本格的に始動である。
この日、コウメさまの菜園に立つ悠里の前には、10人ほどの老若男女が集っていた。
まだ中学生くらいの少女から、杖を突いたご老人まで。
事は数日前に遡る。
その日市場に野菜の種の買い付けに行った悠里は、ある掲示板を見つけたのだ。
それは求人専用の掲示板。
その日仕事のあったウリエルではない、別の護衛と市場に来ていた悠里は、よく考えもせず、彼に求人のチラシを作ってもらった。
『わたしと、野菜作りませんか?』
何の捻(ひね)りもなく、人の注目を集めそうにもない文面で、案の定それ程人は集まらなかったようだ。
いや。あの文面で10人も集まれば良しとするべきか。
「もう、誰も来ないだろ?」
庭園の入口を見ながら言うウリエルに、悠里は頷くと、「じゃあ、庭園の門、閉めて来ま~す」と走って行った。
「あの子らしいわね」
コウメさまがくすくす笑いながら、そう言った。
「まったく……。見切り発車過ぎて、びっくりですよ」
「あらあら、そんな所も好きなくせに」
コウメさまのからかいに、いつもなら冗談交じりに言葉を返すウリエルだったが、この時は口をむっつり噤み、それ以上は何も言わなかった。
「やっぱり何かあったのかしらね~」
ウリエルに聞こえないように呟いた、コウメさま。
機織り工場の見学に行って以来、二人がぎくしゃくしていることに早くも気付いているようだ。
ウリエルはそんなコウメさまから離れ、集まった人々に声を掛け始めた。
まるで、祖母からのこれ以上の追及を避けるかのような行動に、コウメさまは「困ったわね~」と頬に手を当てるのだった。
木々には新緑の芽が出始め、いよいよ家庭菜園も本格的に始動である。
この日、コウメさまの菜園に立つ悠里の前には、10人ほどの老若男女が集っていた。
まだ中学生くらいの少女から、杖を突いたご老人まで。
事は数日前に遡る。
その日市場に野菜の種の買い付けに行った悠里は、ある掲示板を見つけたのだ。
それは求人専用の掲示板。
その日仕事のあったウリエルではない、別の護衛と市場に来ていた悠里は、よく考えもせず、彼に求人のチラシを作ってもらった。
『わたしと、野菜作りませんか?』
何の捻(ひね)りもなく、人の注目を集めそうにもない文面で、案の定それ程人は集まらなかったようだ。
いや。あの文面で10人も集まれば良しとするべきか。
「もう、誰も来ないだろ?」
庭園の入口を見ながら言うウリエルに、悠里は頷くと、「じゃあ、庭園の門、閉めて来ま~す」と走って行った。
「あの子らしいわね」
コウメさまがくすくす笑いながら、そう言った。
「まったく……。見切り発車過ぎて、びっくりですよ」
「あらあら、そんな所も好きなくせに」
コウメさまのからかいに、いつもなら冗談交じりに言葉を返すウリエルだったが、この時は口をむっつり噤み、それ以上は何も言わなかった。
「やっぱり何かあったのかしらね~」
ウリエルに聞こえないように呟いた、コウメさま。
機織り工場の見学に行って以来、二人がぎくしゃくしていることに早くも気付いているようだ。
ウリエルはそんなコウメさまから離れ、集まった人々に声を掛け始めた。
まるで、祖母からのこれ以上の追及を避けるかのような行動に、コウメさまは「困ったわね~」と頬に手を当てるのだった。