異世界で家庭菜園やってみた
「王都って、王さまがいるんですか?」

(この子は何当たり前のことを聞いてるの)と明らかに思っているのを、悠里でも読み取れるくらいに表情に出している。

「国王陛下とお呼びするべきですわ。姫さまはこのあと王都に行かれ、陛下に謁見されることになっております。その後は王宮に一室を頂き、お住みになる予定です」

「お、王宮……」

自分が最も縁遠い場所に住むだなんて。

悠里は軽く身震いした。

「あの。ここではだめなんですか?アシュラムさんもいるんだし」

「アシュラムさまも同行なさいます。ご安心を」

「……はあ、そうですか」

取り付く島もない感じの侍女頭にそれ以上問いを重ねるのも辛くなって、アシュラムも一緒ならあとで彼に聞こうと口を閉じた。

「もうよろしいですか?では、参りましょう」

急かされるように部屋を出て、長い廊下を歩いて行くと、広いホールに出た。

「こちらでお待ちください。アシュラムさまがいらっしゃいますから」

そこは玄関ホールだった。

神殿というのは、絵画とか彫刻とかがあって、もっと煌びやかな所かと想像していたけれど、ここは一切装飾がなくて簡素な建物だった。

それに、アシュラム以外の神官の姿を見掛けない。

これも、あとでアシュラムに聞こうと悠里が考えていると、「おはようございます。姫」と優しい声が掛けられた。

「あ。アシュラムさん。おはようございます!」

「お待たせしました。では、参りましょうか」

促されて玄関を出ると、そこには2台の馬車が待っていた。

「では、姫はこちらの馬車にヨハンナとお乗りください。私はこちらに」

(え!?アシュラムさんとべつべつ?)

それは困ると、悠里はアシュラムに取りついた。

「あ、あの。いろいろ教えて貰いたいことがあるんで、一緒に乗ってくれませんか?」

「え、でも……私と二人きりになりますよ?」

「大歓迎です!!」

「未婚の男女が馬車で二人きりになるなど……」と後で侍女頭に小言を言われてしまったが、悠里には侍女頭と二人きりの空間の方が気詰まりだ。

そうして、アシュラムは悠里の我儘を受け入れてくれた。

彼まで侍女頭に「甘過ぎでは?」とお小言を言われたのを、悠里は知らない。



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