異世界で家庭菜園やってみた
悠里は溜め息混じりに呟いた。

親友に話してみようかとも思ったが、もしそれが彼らの喧嘩の原因になってしまったらと思うと、余計なことはすべきではないと思う。

親友は悠里の想いを知らない。

悠里の想いを知らせる前に、彼女も須江田くんを好きなのだと知ってしまい、彼女の性格上敢えて自分の気持ちを伝えることは出来なかったのだ。

彼女の想いが強いと知ってしまったから。

少ない友人の中で、一番気持ちを許せる人だから。

親友を片思いの相手を天秤に掛けて、悠里は親友を取ったのだ。

それでも、決して悠里の気持ちが親友に劣るということではない。

鬱々としている分、悠里の気持ちは心の中で増幅する。

膨らんで、膨らんで、それが抑え切れなくなったら。

普通なら、相手に思いを告げるだろう。

だが、彼女は奥手に過ぎた。

抑え切れずに、その想いを封印してしまったのだ。

そして、向かうのは畑。

家庭菜園という場が、彼女にとっては現実逃避の手段だった。

メールを受け取った翌日。

悠里は指定された待ち合わせの場には行かなかった。

家にいて、ただ黙々と、畑に種を撒き続けていた。

芽吹くを日を楽しみにしながら。

心の中では、須江田くんの面影を追いながら……。




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