異世界で家庭菜園やってみた
「姫、大丈夫ですか?」

目を覚ました悠里に、アシュラムが労わるように声を掛けた。

「え?え?あ!ごめんなさい。わたし、アシュラムさんの肩に……」

「そんなことお気になさらず。それよりも、眠りながら泣いてらっしゃったので、無理に起こしてしまいました」

「え……?」

ぱっと目尻に手をやると、じんわりと濡れていた。

「夢を……見てたの……」

「夢?」

「うん。あっちの世界にいた時の」

そう言うと、アシュラムが息を飲むのを感じた。

「お父さんや、お母さん。それに、お兄ちゃん……。皆、わたしをいらない子だって言って行ってしまったの……。現実にはそんなこと絶対ないって分かってるのに。皆、わたしをとても大事にしてくれてるから。
それでもね。わたし、両親は共働きだったし、お兄ちゃんとも年が離れてたし、だから、小さい時からずっとおばあちゃんと一緒にいたの。
だからかな。少し皆と距離があるというか。真っ直ぐに踏み込めないところがあるというか……。だからね。わたしにとって、おばあちゃんは一番なんだ。一番の拠り所なの。皆がいなくなっても、きっとおばあちゃんだけは一緒にいてくれる。誰も愛してくれなくても、おばあちゃんだけはわたしを愛してくれる。だからわたしは、おばあちゃんの好きな家庭菜園を一緒にするのよ」

それまで口を挟むことなく、うんうんと頷いて聞いていたアシュラムがふと悠里を見た。

「家庭菜園、ですか?」

「そう。猫の額ほどの大きさの畑だし、そんなに大した量は出来ないけど、それなりに季節の野菜は出来るし、肥料にこだわればとっても美味しい野菜になるわ。そして収穫して、皆に食べてもらうの。そしたら悠里は野菜作るのだけは上手だねって。褒めて貰えて嬉しいから、また次の年も土作りから初めて野菜を作るの。おばあちゃんと一緒に……」

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