異世界で家庭菜園やってみた
そんな二人の背中を、苦い表情で見送った侍女頭。

深い溜め息をつくと、疲れたように近くの椅子に腰掛けた。

「アシュラムさまは、殿下は、あの娘を守ると決めてしまわれたのだわ。何があっても、あの娘の側にいると……」

そう呟くと、また一つ溜め息ををついた。

(ならば、わたくしも覚悟を決めなければならないのだわ。あの娘に、ずっと仕えるのだという覚悟を)

頼りない、小さな娘。

聡明なアシュラムは、あの娘に何かを感じたというのだろうか。

(分からない。わたくしには愚鈍な娘にしか見えないもの……。)

けれど主君たるアシュラムの命だ。

甘んじて受けねばなるまい。

「仕えるうちに、良いところを見つけられたらいいけれど……」

そう呟いて、侍女頭は別の用を済ませる為に立ち上がった。

どうか、あの娘が国王の前で醜態を晒さないように、と願いながら。




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