異世界で家庭菜園やってみた
謁見の間は思っていたよりも狭く、そこにいる人も少なかった。
正面の玉座に座る国王、その傍らに身分の高さそうな初老の男性。
そして壁際には数人の護衛の兵士。
それだけだった。
アシュラムは扉を入ってすぐの所で悠里の手を放し、一人国王の前に進み出た。
「陛下にはご機嫌麗しく」
「挨拶はよいから本題に入ろう。ここには、余と宰相しかおらぬ」
「はい。では、姫、こちらへ」
言われて、おずおずと前へと進み出た悠里は、アシュラムの横に立っても国王の方を見ることなど出来ずに、床のタイルの数を数えている。
産まれて初めて、王と呼ばれる人の前に立ったのだ。
緊張するなという方が無理だった。
「顔を上げよ」
そう国王に言われても、とてもじゃないが上げられない。
タイル数えは2巡目に突入していた。
そんな悠里の様子に、アシュラムはそっと彼女の肩に手を置いて、ぽんぽんと宥めるように軽く叩いた。
「こちらが、異世界よりお越し下さったユーリさまです。緊張されているようですから、着座をお許し頂けますか?」
「……よかろう。許す」
国王の腹に響くような声にいちいちビクビクしていたが、さっそく椅子を用意するよう命じてくれるあたり話の分かる国王なのかもしれない。
悠里は少しだけ顔を上げて様子を窺おうとしたが、それよりも前に兵士が椅子を持って来てくれたので、そちらの方に視線を向けた。
「ありがとうございます」
消え入りそうな声で、やっとお礼だけ言うと、兵士はにこやかな笑みを返してくれた。
ある程度の事情を知っている兵士なのだろうか。
(一体、どれくらいの人が、異世界から人が来たって知ってるんだろう)
後でアシュラムに聞いてみようと思いながら、椅子に腰掛け居住まいを正した。
「よろしいですか。姫」
「は、はい」
見れば、アシュラムは立ったままだ。
「あ、アシュラムさんは座らないんですか?」
「私は臣下ですから。姫はこの国の客人ですからね」
「いかにも、その通りだ」
低い声にまたビクリとして前を見た悠里は、ここでようやく国王の顔をまともに見ることが出来た。
宰相と同じくらいの年齢に見える国王は、一国を統べる人物に相応しい威厳を周囲に放っていた。
中肉中背の身体はしっかり鍛えられているようで、衣服からはみ出ている四肢の筋肉は、その年齢からは考えられないくらい隆々としているし、その顔には幾らか皺が刻まれているが、それがより彼の精悍な印象を強めているようだった。
どちらかと言えば、政治というよりも、戦いの中に身を置いている人のように思えた。
けれど、その精悍さの中にあって唯一その印象を和らげているのが、少し垂れ気味のつぶらな目だった。その瞳は薄青色。宝石のようにきらきら輝いていて、ユーリを真っ直ぐに捕らえていた。
正面の玉座に座る国王、その傍らに身分の高さそうな初老の男性。
そして壁際には数人の護衛の兵士。
それだけだった。
アシュラムは扉を入ってすぐの所で悠里の手を放し、一人国王の前に進み出た。
「陛下にはご機嫌麗しく」
「挨拶はよいから本題に入ろう。ここには、余と宰相しかおらぬ」
「はい。では、姫、こちらへ」
言われて、おずおずと前へと進み出た悠里は、アシュラムの横に立っても国王の方を見ることなど出来ずに、床のタイルの数を数えている。
産まれて初めて、王と呼ばれる人の前に立ったのだ。
緊張するなという方が無理だった。
「顔を上げよ」
そう国王に言われても、とてもじゃないが上げられない。
タイル数えは2巡目に突入していた。
そんな悠里の様子に、アシュラムはそっと彼女の肩に手を置いて、ぽんぽんと宥めるように軽く叩いた。
「こちらが、異世界よりお越し下さったユーリさまです。緊張されているようですから、着座をお許し頂けますか?」
「……よかろう。許す」
国王の腹に響くような声にいちいちビクビクしていたが、さっそく椅子を用意するよう命じてくれるあたり話の分かる国王なのかもしれない。
悠里は少しだけ顔を上げて様子を窺おうとしたが、それよりも前に兵士が椅子を持って来てくれたので、そちらの方に視線を向けた。
「ありがとうございます」
消え入りそうな声で、やっとお礼だけ言うと、兵士はにこやかな笑みを返してくれた。
ある程度の事情を知っている兵士なのだろうか。
(一体、どれくらいの人が、異世界から人が来たって知ってるんだろう)
後でアシュラムに聞いてみようと思いながら、椅子に腰掛け居住まいを正した。
「よろしいですか。姫」
「は、はい」
見れば、アシュラムは立ったままだ。
「あ、アシュラムさんは座らないんですか?」
「私は臣下ですから。姫はこの国の客人ですからね」
「いかにも、その通りだ」
低い声にまたビクリとして前を見た悠里は、ここでようやく国王の顔をまともに見ることが出来た。
宰相と同じくらいの年齢に見える国王は、一国を統べる人物に相応しい威厳を周囲に放っていた。
中肉中背の身体はしっかり鍛えられているようで、衣服からはみ出ている四肢の筋肉は、その年齢からは考えられないくらい隆々としているし、その顔には幾らか皺が刻まれているが、それがより彼の精悍な印象を強めているようだった。
どちらかと言えば、政治というよりも、戦いの中に身を置いている人のように思えた。
けれど、その精悍さの中にあって唯一その印象を和らげているのが、少し垂れ気味のつぶらな目だった。その瞳は薄青色。宝石のようにきらきら輝いていて、ユーリを真っ直ぐに捕らえていた。