異世界で家庭菜園やってみた
「ユーリよ。そなたを無理矢理我が方に呼んだのは、余である。実際に秘術を用いたのはアシュラムであるが、彼は我が命に従っただけだ。余は、この世界において、そなたに対し、一切の責任を負う所存である。そなたの願いなら、いかなる瑣末なことでも叶えよう。
そなたは、この世界にいることに大いに不安があろう。だが、余は、そなたが我が国にとって必要な存在なのだと信じている。
どうか、そなたの力を貸してはもらえまいか」
威厳たっぷりの国王に頭を下げられ、悠里はおろおろとアシュラムを見上げた。
そんな悠里の視線をアシュラムは受けとめ、励ますように頷いてくれたので、悠里は一度深呼吸してから話し始めた。
「あの。わたしは、コウメさまのように機織りの技術もありませんし、本当に取り柄のない平凡な、平凡すぎる人間なんです。国王陛下のご期待に添える自信は全くありませんし、どうして召喚されたのがわたしなのか、本当に不思議なんです。
……アシュラムさんや、国王陛下も、わたしでいいんですか?もう一度召喚をやり直して、もっと技術も知識もある人を召喚し直した方がいいんじゃないでしょうか」
「……」
国王とアシュラム、そして宰相の視線までもが痛かった。
思い切って自分の思いを吐露してみたが、国王が頭を上げて頼むと言った後に、こうまではっきりと自分はやれないと言ってしまったのだ。
叱られはしないかと怯えてしまう。
じんわりと脂汗が滲む額を震える手で拭った。
「姫の代わりはいないのですよ」
そんな悠里に、アシュラムの静かな声が掛けられた。
「え?」
彼を見上げれば、先程と変わらぬ優しい表情で悠里を見ていた
「姫がこの世界に来て下さったのは、きっと偶然ではありません。姫でなくてはならない理由があったはずです。私は確かに召喚の秘術を行いましたが、あれは特定の人物を意識して発動される魔法ではないのです。現代の姫の国の人、どなたもがその対象になりうる。その中で、この魔法に反応されたのが姫だった。そこに神のご意志が働いているのか、それは私にも分かりません。ですが、姫はここに来るべくして来られたのです」
「何も、出来ないのに?」
「そう思われているのは、姫だけかもしれませんよ」
「……アシュラムさんは、わたしを知らないから……」
そう言うと、アシュラムは少しだけ傷付いた顔をした。
親身になってくれている彼を突き放すような言い方をしてしまったことに、少し後悔したが、それでも出会ってまだ一日も経っていないのだ。
彼が悠里のことを知らなくて当たり前だった。
むっつりと黙ってしまった悠里から視線を逸らすと、アシュラムは国王に向かって言った。
「姫には時間が必要です。陛下。もし、どうしても姫が嫌だと仰るなら無理強いはしたくありません」
「ふむ。もっともだ。だが、我が国には時間がないことも確かだ。ユーリよ。コウメさまに会ってみるか?」
コウメさまの名に、悠里は顔を上げた。
そして勢いよく、縦に首を振った。
「ならば、コウメさまに会えるよう、手筈を調えよう。また追って、沙汰を出す」
「では、今日の所はこれで」
「うむ。アシュラム、ユーリを頼むぞ」
「御意」
そなたは、この世界にいることに大いに不安があろう。だが、余は、そなたが我が国にとって必要な存在なのだと信じている。
どうか、そなたの力を貸してはもらえまいか」
威厳たっぷりの国王に頭を下げられ、悠里はおろおろとアシュラムを見上げた。
そんな悠里の視線をアシュラムは受けとめ、励ますように頷いてくれたので、悠里は一度深呼吸してから話し始めた。
「あの。わたしは、コウメさまのように機織りの技術もありませんし、本当に取り柄のない平凡な、平凡すぎる人間なんです。国王陛下のご期待に添える自信は全くありませんし、どうして召喚されたのがわたしなのか、本当に不思議なんです。
……アシュラムさんや、国王陛下も、わたしでいいんですか?もう一度召喚をやり直して、もっと技術も知識もある人を召喚し直した方がいいんじゃないでしょうか」
「……」
国王とアシュラム、そして宰相の視線までもが痛かった。
思い切って自分の思いを吐露してみたが、国王が頭を上げて頼むと言った後に、こうまではっきりと自分はやれないと言ってしまったのだ。
叱られはしないかと怯えてしまう。
じんわりと脂汗が滲む額を震える手で拭った。
「姫の代わりはいないのですよ」
そんな悠里に、アシュラムの静かな声が掛けられた。
「え?」
彼を見上げれば、先程と変わらぬ優しい表情で悠里を見ていた
「姫がこの世界に来て下さったのは、きっと偶然ではありません。姫でなくてはならない理由があったはずです。私は確かに召喚の秘術を行いましたが、あれは特定の人物を意識して発動される魔法ではないのです。現代の姫の国の人、どなたもがその対象になりうる。その中で、この魔法に反応されたのが姫だった。そこに神のご意志が働いているのか、それは私にも分かりません。ですが、姫はここに来るべくして来られたのです」
「何も、出来ないのに?」
「そう思われているのは、姫だけかもしれませんよ」
「……アシュラムさんは、わたしを知らないから……」
そう言うと、アシュラムは少しだけ傷付いた顔をした。
親身になってくれている彼を突き放すような言い方をしてしまったことに、少し後悔したが、それでも出会ってまだ一日も経っていないのだ。
彼が悠里のことを知らなくて当たり前だった。
むっつりと黙ってしまった悠里から視線を逸らすと、アシュラムは国王に向かって言った。
「姫には時間が必要です。陛下。もし、どうしても姫が嫌だと仰るなら無理強いはしたくありません」
「ふむ。もっともだ。だが、我が国には時間がないことも確かだ。ユーリよ。コウメさまに会ってみるか?」
コウメさまの名に、悠里は顔を上げた。
そして勢いよく、縦に首を振った。
「ならば、コウメさまに会えるよう、手筈を調えよう。また追って、沙汰を出す」
「では、今日の所はこれで」
「うむ。アシュラム、ユーリを頼むぞ」
「御意」